世界でいちばん 不本意な「好き」


「お昼何食べる?」

「あまり高くないものがいいんだけど」

「じゃあファミレスかファーストフード店がいいか」

「え、いいの、そんなところで」

「そんなところって?」


26歳からしたら、まして芸能人からしたらそんなところ、じゃないの?


「や、助かります」

「よかったです。休みの日に友達と過ごすの、なんかすげー青春って感じでたのしー」


まだ会って5分くらいしか経ってないのにもう楽しいらしい。まだ何もしてないのに、へんなの。


「休みの日ってなにしてるの?」


青春って感じ、なんて言うけど友達と過ごすのって大人はしないものなのかな。


「なんだろ。あんまり出かけないかな。映画観たり本読んだり…活動休止する前はだいたい自分の仕事の振り返りしてたな」

「振り返り?」

「そ。バラエティー出たときの映像見たり出てるドラマ見たり。で、毎度反省反省反省…」


その日々を思い出したのかだんだんと項垂れてついにわたしより小さくなった。

そんなにダメなところがあったのかな?でもそんな人にファンってつくの?


「今思い返すとつまんねー生活してたのかも」


落胆する姿を見てどうしてか笑いがこみ上げてくる。

いつもなら必死に抑えてなぐさめようとするのに、どうしてかふみと相手だと隠す気になれない。


「ふみとも自分のことで反省したり落ち込んだりするんだね」

「え、するよ!すげーするからな!けっこう真面目だから!」

「うん、えらいんだね。だからたくさんのひとから人気なんだなって納得した」

「…え」

「ほら、バイト先の新人くん。あの子がピカロは老若男女問わず人気なんだって言ってたから。外国にもファンがいるんでしょう?あっこなんてふみとが言ってきゅんとした言葉とかじーんときた言葉とかノートにメモしてるんだよ。あれ見たときはさすがにびっくりしたけど、けっこうすごいひとなんだなって思った」

「ちょ、アリス、」

「わたしはくわしくないから年上の同級生だけど、よく考えたらすごいひとと隣の席になっちゃったんだなって。だから今日はちゃんと変装してきてくれてよかった。普段からもっと自分のプレミアムさを自覚したほうがいいよ」


ついでについでに、と関係のないことまで言った気がする。まあいいや。

それにしても隣の人間の様子がおかしい。

< 123 / 314 >

この作品をシェア

pagetop