私とあの場所と
卒業式前日
最後にこの場所にお礼を告げたい。
忘れたくない。山あり谷ありだった中学校の思い出の中心にあるこの場所を目に焼き付けたい。だから以前から決めていた。
今日、ここで1人、時を過ごす。
この場所と最後に対話する。誰にも邪魔されずに自分と、図書館に向き合う。心を通わせる。

卒業式予行、半日で学校が終わり時間ができる。友達の誘いも断った。友達とはこれからもいつでも会えるから。
本を読むわけでもなくただ1番お気に入りだった席に座る。1年生の時よくやっていた座り方を思い出し、その姿勢をとってみる。
懐かしい思い出が私を取り囲む。数え切れないほど通いつめ、座った場所にこの先ほとんど入ることができなく、座ることができなくなる。そのことにようやく実感が湧く。
自分がこれまで考えてきたこと、図書館での思い出、全てが頭を駆け巡る。
(部活の卒業アルバムの写真を撮る時、カメラマンさんを待つ時寒くて図書館に風よけに入っておしゃべりしたこともあったなあ。)

自然と涙が溢れる。ただただ無くしたくない、いつまでも鮮明に覚えていたい。その一心で椅子に触れ、本棚に触れる。指先に感触を覚えさせる。
近くに1年生が1人座る。靴の色で見分けがつく。その子も本を手にしている。まるで過去の自分を見ている気がした。言葉にならない衝撃が走る。
ありがとう。

ぼーっと座ったまま本棚を眺める。本がたくさん並ぶ中、一冊の本の背にある題名が目に飛び込んでくる。
「ソバニイルヨ」
図書館から私へのメッセージ。そうとしか思えなかった。しばらく動くことができなかった。
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