あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
さっと何かが動いた。
なに? 
ここに熊は生息していないはず、だけどなんだか大きい感じ。もしかして人?
それとも祖父?
でももし、祖父じゃなかったら?
今までこんなこと一度もなかった私、胸がドキドキしておんぶ紐を強く握った。
「だ、誰かいるんですか?」
緊張で体が震える。
だが、そんな私とは無関係に蛍が光を点滅させて周りを飛んでいた。
「そう言う君は誰なんだ?」
若い男性の声?
こんな声、この島にはいない。
——誰?
「ここは私有地ですよ。か、勝手に入らないでください」
私は柊一を守るように後ろに下がった。
すると川をはさんが向こう側から人間のシルエットが浮かび上がり、蛍の光が男を照らした。
だがその顔を見て私は心臓が止まるかと思った。
そこに立っていたのは
——悠一さん?!
そう、間違いない。
彼は、東京最後の夜に行きつけの店だった「ひとりぼっち」で出会った悠一さん。
そして私の背中ですやすや寝ている柊一の父親だった。
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