あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
翌日、私は柊一を祖母にみてもらい、昨日と同じ時間に蛍の森へ行った。
すでに数匹の蛍が優しい光を放っていた。
だが、それを純粋な気持ちで見ることはできなかった。
蛍の森の真ん中には小川が流れている。
悠一さんは小川の向こう側にいた。
私に気づいた悠一さんが近づいてきた。
もし、彼が朝倉ホールディングス社長の御曹司じゃなかったら?
私が柊一を妊娠していなかったら?
私は彼との再会を喜んだだろうか?
「来てくれたんだ」
「会いたくてきたんじゃありません。祖父から今回の経緯は聞きました」
「そうか。じゃあ、納得——」
「してません。できるわけないじゃないですか。ここは私にとって大切な場所なんです。ですからお願いします。この森を返してください」
私は深々と頭を下げた。
だが彼は私の頼みをため息で返した。
こんなにお願いしているのに、なんて態度なの?
私はキッと彼を睨んだ。
だが彼は表情一つ変えなかった。そして私との距離を縮めた。
「さっきから君は自分のことばかりだね」
「え?」
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