隣の部屋の新人くん
二人の陰が電灯の光で映し出される公園。
当然のように、私たち以外誰もいない。

本当に、坂口くんと私はコンビニでアイスだけ買った。

ブランコに座って食べる。

「これ、こういうの子どもの頃しませんでした?」

坂口くんがクルクル回る。

「ぐるんぐるん回るやつ?」
「そう」

そう言って、足を離す。
勢いよくグルグル回って、すぐに反動で止まる。

「恋人の名前、何て言うんですか」

坂口くんは今度は反対に回りながら言う。
突然の話題の切り替えに戸惑う。

「よしや」

私は小さく言った。

「佳弥、今何してるんですか」
「イスラエル行ってる」

「イスラエル?」と坂口くんは笑う。

「すごいとこ行きましたね」
「信じられない」

私もブランコぐるぐるする。

回ってる間だけはブランコに夢中になれた。

「なんでついていかなかったんですか」

私はぶらんと浮かぶ自分の足に目を落とす。
電灯が照らす私の影が、足元で揺れている。

「ついて来いって言われなかったし」

視線の端で、坂口くんが私を見てるのが分かる。

「連絡しても返事来なくなっちゃった」
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