殺人感染
香はしっかりと雪の手を握り締めているが、その手はすでに冷たくなりはじめていたのだ。


「香しっかりして! 死なないで!」


頬を叩いて目を開けさせようとしてもできなかった。


香は微笑すら浮かべ、雪の隣で眠るように死んでいたのだ。


「やだよ2人とも、なんでこんなことになるの!?」


必死で2人の体を揺さぶる。


さっきまで2人とも生きてたじゃん。


友達なのに、こんなところにおいていくなんてできないよ!


「遥、もうやめろ」


2人の体を強く揺さぶるあたしに、純也が言う。


「でもっ!」


「殺人鬼だ」


言われて顔を上げると校舎から10人ほどの殺人鬼がゆらゆらと出てきたところだった。


あたしは息を飲み、立ち上がる。


なんでこんなときにまで来るの……。


せめて2人の体を移動してあげたい。


そんな願いすら、この世界では許されないみたいだ。


殺人鬼たちがあたしたちに気がつき、走り出した。


「行こう」


純也が短く言い、あたしの手をとって駆け出したのだった。
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