殺人感染
「大丈夫、俺たちは生きているから」


ベンチで休憩していると、不意に純也はそう呟いた。


「そうだね……」


公園のあちこちにも死体は転がっている。


だけどそれを気にする余裕も体力もすでになかった。


なにもかもが限界なのだ。


この殺人鬼の感染が起こり始めてからまだ1日も経過していないというのに。


「ねぇ、純也。もしあたしが感染したら、置いて行っていいからね?」


「なに行ってんだよ。置いていくわけないだろ」


「だけど、純也のこと攻撃しちゃうよ」


「そうなる前に、ちゃんと対処してやるから」


「そっかー」


話ながら、なんだか目の前が灰色の染まっていく気がした。


自分の意識がありながら、それが体の奥へと移動していくような、奇妙な感覚。


「遥?」


純也が名前を呼んでいる。


答えなくちゃ。


理解しているのに、あたしの体は反応しなかった。
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