俺が優しいと思うなよ?
世界のホテル王と呼ばれる新堂リゾートが経営する一流高級ホテル「ラグジュラリオス」。その煌びやかなパーティー会場は豪華に且つ清廉に着飾った紳士淑女で賑わっている。
私はその受付ホールの隅で小さくなっていた。
──もう、なんて日なの……。
壁と同化できたらどれだけいいのか、とばかり思いながら自分に場違いな空間に辟易していた。
それは朝から続いていた。
ふわふわと幸せな気分を感じて目を覚ませば、見知らぬ部屋の見知らぬふかふかベッドの中にいた。そして何気に視線を動かせば、私をじっと見る成海さんの顔があった。
「うひゃっ!?」
と、咄嗟に叫んで慌てて布団の中に逃げ込む。いや、むしろベッドから出なきゃいけなかったと、布団の温もりに負けた自分に凹んだ。
その時、潜り込んだ布団の上からグッと重みを感じた。体を丸ごと抱きしめられているような気もしたが、それは違うと頭の中で打ち消す。
しかし、布団の肌触りと柔らかさに負けて、またもや二度寝という贅沢な時間を過ごしてしまった。さすがに今度は「起きろ、起きろ」と成海さんに急かされて起こされた。
寝ぼけた私を引っ張り椅子に座らせ、ハムとレタスとチーズをはさんだクロワッサンサンドとホットコーヒーを目の前に置かれ、成海さんが切れ長の目で私を見下ろした。
「早く、食え」
「……はい」
モグモグと、ぼんやりと食べる私の向かいで、成海さんは新聞を読みながらコーヒーに口をつける。
──思えば、何故ベッドに?
私が寝ぼけて成海さんの寝室に行ったのだろうか。それとも成海さんが私を……?
「今日も教会のデザインを考えるんだろ?時間がなくなるぞ」
「はいっ」
呆れ顔で睨んでくる彼に、ハッと気づいてクロワッサンサンドを頬張った。