俺が優しいと思うなよ?


 「パーティーで詩織がお前に「帰れ」と言ったそうだな」
「はい。成海さんと会うから、と言われましたので」
「……俺は、お前を連れて帰ろうと決めていた」
「……え?」
ソファに戻ってきた成海さんの手にはおかわりしたコーヒーのカップを持っている。
「俺、前の日に言ったよな?詩織とはもう過去のことだ、と。絶対に復縁はない」
不機嫌に両目を細める彼は小さく首を左右に振る。
しかし詩織さんは超絶がつくくらいの美人さんだ。
「でも、あんな綺麗な彼女に迫られたら、ヨリが戻る可能性だってある……」
「ありえない」
成海さんはスパンッと言葉を遮る。その端正な顔がスッと近づいて、切れ長の瞳が私を捕える。

「俺は今、「お前だ」という女しか興味はない」


全てを見透かされているように見つめられ体が硬直したように動くことも、視線さえ逸らすこともできず、ドクドクと血管が軋むくらいの勢いで血液が体じゅうを駆け巡る。体中が熱く、それがたった数秒だろうが、息苦しく思えるくらい長く感じた。

先に視線を外したのは成海さんだった。視線は下にいき、斜め上を向いて困ったように目尻を下げた。
「わるい、三波を困らせようとしたんじゃない。俺も迂闊だった、お前が詩織と接触すると思ってなかった」
自分に非があるような言い方に、私も慌てて「違うんです」と声にした。
「私がちゃんと成海さんを待たせていると言えばよかったんです」
と、頭を下げて「ごめんなさい」と謝る。


「パーティーからアパートに帰ってから、教会のデザインが浮かんだのでパソコンがある、あのホテルに行ったんです。前に体調を悪くした私を連れていってくれた、あのビジネスホテルです……」

その後デザインを会社へ渡してアパートに帰り、真木さんが訪ねてきて出かけたことを話す。そして待ち合わせの相手が西脇だったこと、強引にマンションへ連れて行かれ科学館のデザインを描くよう強要されたことを話した。
「科学館のデザインは断ったんです。西脇さんは「ヴェール橘に戻ってまたコンビを組めばいい」と言って響建築デザインの退職届まで作っていました」
「会社を辞めさせようとまでしていたのか」
と、成海さんはけしからんとばかりに眉間にシワを寄せている。

「実際に同じ状況で一度会社を辞めたことがありましたけどね……誰かさんのおかげで」
と、隣の誰かさんを軽く睨んでみたが、全く自省する気はないようだ。

「あんなヤツと一緒にするな。あの時はお前を捕まえるのに必死だったことは認めるが、お前の意思を無視するつもりはない。ましてや監禁するなど、人間として論外だ」
そう言って、今度は私を睨み返して西脇を否定した。

顔の綺麗な獣はそうやって自分の棚上げはしっかりして、私への強引さの数々なところは反省する気はないようだ。
とはいうものの、結局は成海さんたちが来てくれたおかげで助かったのだ。
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