俺が優しいと思うなよ?
午後、成海さんに「行くぞ」と言われ、私は急いで支度をして倉岸さんに「行ってきます」と声をかけて後を追った。
オフィスビルのすぐ近くにバス停があるのでバスで移動するかと思っていたが、成海さんを追いかけたのは地下の駐車場だった。
「早く乗れ」
私を助手席に促して、彼は運転席で車のエンジンをかけた。
先日の退職騒動の時に体調が悪くなりこの車に乗せてもらったが、あの時はどんな車かさえ見る余裕がなかった。
成海さんの車は真っ黒なボディの大きな国産車だった。
助手席に乗り込めば、車はすぐに動きだした。
車はとても滑らかな走りで、彼の運転が上手いことが分かる。
現場近くのコインパーキングに車を駐車させる。
車内では成海さんも私も口を開くことはなかった。
都市開発建設予定区画。
キヨスクで働いていた頃も、駅からこの土地を遠目で見ていた。いざ現場の前に立ってみれば、それがこんなに広大な土地なのだと実感する。そしてここが本当に現代の街に生まれ変わるのだと、改めて現実味が増した。
「こっちだ」
歩き始めた成海さんに、私も一歩を踏み出した。