俺が優しいと思うなよ?

「三波、行くぞ」
今日も成海さんは私を呼んで車に乗せて現場へ連れて行く。
何日も、何日も。
まるで何かと根気比べでもしているかのように。

私は都市開発区域の協会の建設予定地の前で、公園の敷地との間の遊歩道となる位置に立っている。
東を向いて静かに目を閉じると、サアァァ……と瞼の裏に緑の広がる公園が見えてくる。人々が憩いに集まり元気な子供たちの笑い声が聞こえてこそうだ。公園に設置された遊具で遊ぶ、のんびりと日光浴をする、そんな平和を感ぜずにはいられない。
そして西を向けば、緩やかな石畳の階段が教会のある丘の上へと案内してくれる。階段の横にはスロープがあり、高齢者にも歩きやすい配慮がされている。石畳の階段を上がると、そこには……。

目の前が真っ白になって何も映らなくなり、私は目を開けた。
この数日間、ずっとこの調子だ。

──どうして何も見えないのだろう。私の結婚に対しての意識が低いから……?

トートバッグの持ち手をぎゅっと握り、はぁとため息を零す。もう何度目のため息かも数えきれない。


「三波」
後ろから声をかけられて振り向く。声の主がわかっているので、特に驚くこともない。
タブレットを片手に、成海さんが近づいてきた。
「少し早いが昼飯にしよう。午後から外出することになっているんだ」
と言って私の前を通り過ぎていく。
少しくらい悩ませてくれてもいいのに、と思いながらも私は後を追った。

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