エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
不覚にもその瞬間、両方の目からぽろっと涙がこぼれた。
ばか。このタイミングで泣いたら、未練があるのがバレバレだよ。そう自分に突っ込んでも、涙は止まらない。気づけば、口からも本音があふれていた。
「でも、他の女性と幸せになる大和さんを近くで見ているのはつらいから……っ。だから、辞めます。無責任ですみません……ホントに、ホントにすみません……っ」
強引に彼の手を取り、退職願を握らせる。そしてペコっと頭を下げ、逃げるように彼に背を向けたその時。背後でビリッ、ビリッと、紙が破れる音がした。
まさか、と思って振り向くと、大和さんは形をなくした退職願の最後の切れ端を床に放り、ふっと私に微笑みかけた。
「悪いけど、離婚届もすでにこの状態だから」
「え……?」
放心状態の私に、大和さんは一歩ずつ歩み寄ってくる。そして私の優しく背中を引き寄せると、ギュッと抱きしめた。
「きみは優秀な秘書だが、今回の選択に関しては間違いだったと言わざるを得ない。きみが目の前から去って、俺が幸せになれるわけがないだろう?」