エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「はい」

 返事をする大和さんから少し離れた場所で、私は高鳴る胸を押さえてじーんと幸福を噛みしめていた。

 別れる覚悟をしていたはずが、こんなに大きな愛と贈り物を受け取ってしまうなんて思わなかった……。

「失礼します」

 社長室に入ってきたのは紫倉さんだった。彼はドアを開けたまま後ろにいる誰かに目配せをすると私の方を向きにっこり微笑んで、「観月さんに謝りたいという方々が来ていますので」と言った。

 謝りたい方々? 頭に疑問符を浮かべつつ紫倉さんの背後に注目していると、気まずそうに入ってきたのは、秘書課の先輩方四名だった。

 その中で腕組みをしてそっぽを向いているひとりを、紫倉さんが冷たい視線で一瞥する。

「それが謝罪する者の態度ですか? ま、あれほど低俗な嫌がらせをする人間ですから、礼儀も一般常識もなくても驚きはしませんがね。私が給湯室で今回の件の噂話をするあなたたちに気づかなければ、謝罪するつもりもなかったのでしょう。救えない馬鹿ですよ」

 丁寧な口調で毒々しいセリフを吐く紫倉さんに、先輩は不本意そうにしながらも腕組みを解いて私を見た。そして、小さく口を開く。

「……わ、悪かったわよ。あんなメモ書いて」

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