エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
「私がスニーカー通勤をするのは、会社で秘書の仕事に集中するためです。先輩方にとってはファッション的にダサくて許せないかもしれませんが、仕事のパフォーマンスは間違いなく上がります。きっと、誰かに嫌がらせしようなんて考えもなくなりますよ」
私がそう言うと、大和さんがふっと含み笑いをした。
〝秘書はいつなんどきでも完璧なファッションでいるべき〟――その考えを本で読んだと話した時の、私の嘘に気がついたのだろう。
「俺も異論はない。あとは航紀が責任を持って、彼女たちの根性を叩き直せばそれでいいと思うが、航紀はどうだ?」
「私は構いませんが……本当に、そんな甘い処分でいいのですか?」
紫倉さんが、不安げな目で私を見る。いつも私を気にかけてくれていた彼だから、嫌がらせの件を知った時は心苦しかっただろう。
でも、紫倉さん自身はなにも悪いことはしていないし、これからも私の上司でいてほしい。処分なんて別にいいのだ。
「はい。もしまたなにかあったら、その時は紫倉さんにすぐ告げ口します」
「……わかりました。寛大な措置に感謝します。また同じ過ちを繰り返すようなら、目には目を、ということで彼女たちの椅子に画鋲でも仕掛けることにします。それともパソコンのキーボードがいいでしょうかね」