エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
サラッと怖いことを言う紫倉さんに、先輩方は寒気を感じたようにぶるっと体を震わせ、腕をさすっていた。
先輩方が社長室を去った後、紫倉さんは大和さんに断ってから、私を廊下に連れ出した。
なんだろうと思っていると、彼は微笑ましいものを見るように、私の左手薬指に輝く指輪を見下ろして言った。
「その指輪、大和からですね?」
「あっ、ええと……はい」
私は照れながらも素直に認めた。紫倉さんは私から目を逸らし、寂しげな笑みを浮かべる。
そういえば、彼は私たちの結婚に賛同しかねると言っていたんだっけ。今でも、その気持ちは変わらないのかな……。
「卑怯な手を使わず、正々堂々戦うべきでしたね」
「えっ?」
戦うって、誰と?
「いえ、こちらの話です。大和のこと、どうかよろしくお願いします。お幸せに」
「はい、ありがとうございます」
「さて、私はあの腐った秘書どもを教育し直さなければ」
紫倉さんから初めて祝福の言葉をもらい、ホッとしたのもつかの間。
にこりと微笑みつつも目の奥が全く笑っていない彼にゾクッとしたものを感じつつ、秘書課へ帰っていく彼を見送った。