エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

 社長室へ戻ると、片手にゴミ箱を持った大和さんが大きな体を屈めて破り捨てた退職願を一生懸命拾っていた。その姿が無性に可愛らしくて、つい笑いがこぼれる。

「おい叶未、笑っていないで手伝ってくれ。ちなみに家に帰ったら、離婚届の掃除もあるからな」
「ふふっ。了解です」

 大のの大人がふたりでしゃがんで、小さな紙のかけらを拾う。

 その馬鹿らしい作業がなぜだかとても愛おしくて、時々大和さんと目を合わせ、意味もなく笑い合った。

 
 大和さんのマンションに帰宅し離婚届の片付けが終わると、彼がシャワーを浴びている間に、私は姉に連絡した。リビングのソファに腰掛け、スマホを耳に当てる。

 数回の呼び出し音で姉は電話に出れくれた。まだ職場の学校にいるらしいけれど、ちょうど帰るタイミングだったそう。大和さんとうまくいったと報告すると、安堵のため息をついた。

『もう~……今日は仕事中もずっと心配してたんだからね』
「うん、ごめん。今度なにか美味しいもの奢るから」
『その時は旦那様も連れてきてよね。家族の中で私だけまだ会ってないんだから。でもよかった、これで安心して部屋が解約できる』

 なにげなく放たれたひと言に、ふと固まる。あの部屋をそのままにしてくれておいたのは、もしかして……。

< 143 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop