エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

 離婚危機を乗り越えた私たちは、翌年の六月にイタリアのフィレンツェで挙式をした。

 日常のさりげない会話の中で、月並みだがジューンブライドに憧れていると話したら、大和さんがそれを覚えていて、日本は梅雨だからと海外挙式を計画してくれたのだ。

 百年以上前に建てられたゴシック様式の教会はとてつもなく荘厳な雰囲気で、四方のステンドグラスから降り注ぐ陽の光が、心を清めてくれるようだった。

 式の中で交換した結婚指輪は、婚約指輪と同じく大和さんがデザインした特別なもの。

 インサイドストーンにはお互の誕生日を忘れないように、それぞれの誕生石を入れてもらった。

 式の後もそのままイタリアに滞在し、新婚旅行を楽しんだ。時々仕事を挟んだりもしたけれど、夢のような甘い時間を過ごした。


 その後は日常が戻ってきたが、相変わらず私は彼の秘書をしている。更衣室で悪口を言われることもすっかりなくなり、平穏で幸せな日々だ。

「叶未、コーヒーちょうだい」
「はい。お待ちください」

 社長室から廊下に出ると、窓からはぎらぎらと夏の日差しが差し込んでいた。八月を迎えた東京は、酷暑と呼ばれるほど気温の高い日が続いている

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