エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

 そのせいか、最近私は少し体調を崩していて、食欲がなく体が怠い。熱はないのでただの夏バテだと思うけれど……。

 少々思い足取りで給湯室に入ると、コーヒーメーカーのサーバーからカップにコーヒーを注ぐ。

 そして立ち昇る湯気が鼻先をかすめるのと同時に、私は強烈な吐き気を催してその場にしゃがみ込んだ。

 どうしよう、気持ち悪い……。ハンカチで口元を押さえ、症状がおさまるのを待つ。

 しかしなかなか吐き気は引かず、額を幾筋もの脂汗が伝う。

「ちょっと……どうしたのよ!」

 体を丸めたままキッチンにもたれていると、たまたま秘書課の先輩がやってきて、私のそばにしゃがみ込んだ。

 大丈夫ですと答えたいけれど、口を開くと戻してしまいそうな気がして、私はなんの反応もできない。

「気持ちが悪いの? 熱中症かしら……とりあえずひと口水を飲みなさい。落ち着いたら医務室行きましょう」

 先輩、優しい……。さっき力なく薄目を開けて確認したら、ハロウィンパーティーの日に【勘違い女】のメモを残した先輩だった。

 あの頃のわだかまりがなくなって、よかった。紫倉さんの再教育が効いたのかな。

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