エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

 食事中に行儀が悪いけれど、私は一旦席を立ち、リビングに置いていた仕事用のバッグから例の契約書を取り出して姉に見せる。

 姉は難しい顔でそれを黙読し、読み終える頃にはなぜか表情をやわらげていた。

「叶未は否定するかもしれないけど、私にはこれ、愛のある契約に見えるな」
「えっ?」

 姉の口から耳を疑うセリフが飛び出し、私は目をぱちくりさせる。

「だって、まず第一条で〝誰より愛する〟なんて言ってくれてるでしょ? 第四条の〝他の異性と親密にならない〟っていうのも、彼の嫉妬心が反映されてるように思えるし」
「そう……かな」

 にわかに信じがたいが、臨床心理士の姉に言われると、真実味がある。もしも姉の言う通りこの契約に愛があるのだとしたら、私はどうしたいんだろう。

「でも、第五条はなんのため? 最初から離婚の可能性を伝えておくなんて、いずれ彼は別れるつもりなのかなって勘繰っちゃうよ」

 契約書に並んだ文言の中で、そこだけ温度が違うのが気になっていた。

 婚姻後三カ月は試用期間。その間にどちらかが離婚を望んだら結婚生活はあっさりおしまいだなんて……。

 不安がる私に、姉は今一度契約書に視線を落として黙り込んだ後、ゆっくり口を開く。

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