エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
片想いしか知らない私にとって、この展開はまるで想定外だ。いつも、遠くから見ているだけでいつの間にか恋は終わっているのに、どうして今回に限ってこんなことに。
胸に抱いていた契約書をそっと体から離すと、ファイルにも入れずに持っていたせいで握っていた部分に少々皺が寄っていた。
慌ててロッカーから出した予備のクリアファイルに入れ、改めてじっくり眺める。
これに判を押したら、本当に社長と夫婦に?
誰にともなくそう問いかけるのと同時に、先ほど頬や頭に触れた彼の手の感触や温もりが蘇り、ひとり頬を熱くした。
「えっ? 結婚を申し込まれた!?」
帰宅後、夕食の時にさっそく社長とのことを姉に相談した。
ダイニングの食卓で向き合う姉の箸から、焼き魚がぽろりと皿に落ちる。
「……うん。望まない相手とお見合い結婚するくらいなら、私の方がいいって」
ぼそぼそとそう告げると、姉が怪訝な顔で私に尋ねてくる。
「なんだか微妙な言い方ね。叶未を好きってわけではないの?」
「たぶん。でも、契約書では……」