エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
「ありがとう、お母さん」
『でもまさか、叶未の方が先を越すとはね。芽衣、今頃焦ってるんじゃない?』
しんみりした雰囲気から一転、母が悪戯っぽく言った。
確かに姉は独身でしばらく彼氏もいないようだけれど、その状況を嘆いたりはしていない。私と社長のことも、心から祝福してくれている。
「お姉ちゃんに限ってそれはないよ。ところでお母さん、彼を連れて実家に挨拶に行くのはいつがいい?」
緊張しながら話を本題に戻すと、耳元で母の甲高い悲鳴が聞こえた。
『きゃ~!〝娘さんを僕にください〟っていうあれね? うちはいつでもいいから、日程はあなたたちの都合で決めなさい。とくに彼の方は忙しいでしょうし』
「わかった。じゃ、決めたらまた連絡するね。お父さんにもよろしく」
『うん。楽しみにしてるわね』
母との通話を終え、スマホを枕元にポンと放ってベッドに横になる。
レストランではお酒を飲まなかったはずなのに、社長と過ごしたひと時が幸せすぎて、酔っ払った時のように気持ちがふわふわしている。
「そうだ、ピアス……」
ハッと思い出して起き上がり、ベッド脇の床に無造作に置いていたバッグからプレゼントの箱を取り出す。
姿見の前に立ち、もともとつけていた一粒のパールピアスから、社長に贈られたモルガナイトのピアスにつけ替えた。
男の人……それも好きな相手からの、初めてのプレゼント。
その事実を噛みしめただけで口元がふにゃっと緩み、鏡に映った自分の顔に、ひとりで恥ずかしくなった。