俺と妻と傷口
先宮を離すと、ゲホッゲホッ……と咳をしてその場に座り込んだ。

「先宮さん!大丈夫ですか!?」
「えぇ……」

「早く消えろ……」
「ちょっと、奏多!」
「早く!!気持ちが収まらないんだよ…!!」
「は…はい……」
先宮はよろよろとその場を、後にした。

「皆さん、ごめんなさい!仕事中なのにこんな……」
その場にいた社長達に、華恋が頭を下げる。
「後は、私が主人を収めますので、皆さんは仕事に戻って下さい!」
そう言うと社員達も、
「華恋、気にしないで!今回は先宮さんに否があるみたいだし。みんな戻りましょう!」
と社員達はそれぞれ仕事に戻って行った。

「奏多」
「悪かった…華恋」
「ちょっと外で話そ?ここは皆さんの邪魔だから…」
「うん」


会社の外のベンチに並んで座る。
少しずつ頭が冷えてきた。

「奏多、ほんとの気持ちが知りたい」
「ん?」
「オムライス、迷惑?」
「は?あり得ない!
先宮が何て言ったか知らねぇが、俺は先宮に自慢したんだ。華恋が人参嫌いの俺の為に、オムライスのご飯にすりおろして、少しでも人参を食べるようにしてくれたって!」
「そうだったんだ」
「ほんとはね、今朝起きてたんだ俺」
「え?」
「華恋の言ってたこと聞いてた。だから先宮に、これ以上華恋を傷つけさせないように、話したんだ。
華恋が俺の為にどれ程のことをしてくれているのか、俺がどれ程華恋を愛しているか、伝えたくて」
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