カタブツ竜王の過保護な求婚

 後を追うレイナの胸の中には今まで以上の喜びに溢れていた。
 葉冠はノーラが上手く乾燥させてくれたので、箱に入れて大切に仕舞っているし、紅玉のネックレスは厳重に保管して、舞踏会などでの出番を待っている。

 望まぬ婚姻だったなのに――素敵な恋人もいたのに、それでもカインは手間をかけて葉冠を作ってくれ、曾祖母の形見の品を贈ってくれたのだ。
 レイナは少し前を歩くカインを見つめた。
 最初は冷たい言葉とそっけない態度に傷ついた。
 だけど本当は優しい方だともう気付いている。

 好きになってくれなくてもいい。ただ、嫌われたくない。疎まれる存在でいたくない。
 だからカミーラのことは気付かないふりをしよう。目を逸らしていればやり過ごすことができる。
 レイナは、木漏れ日の中で柔らかく光る金色の髪に目を細めた。と、張り出した木の根につまずく。


「あっ!」


 とっさに振り向いたカインがそのたくましい腕で支えてくれた。


「大丈夫か?」

「は、はい。……ありがとうございます」


 ドキドキとうるさい音を立てる心臓は、転びそうになったからではなく、カインの腕の中にいるせいなのだ。
 息をするのも苦しくて、体が震える。
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