シークレットベイビー② 弥勒と菜摘
弥勒が途中で帰宅した。
部屋を覗いて「櫂、来たんだ」と喜んだ。
帰ったままの格好で、手洗いうがいだけした弥勒も床に座った。
あぐらをかいた弥勒の長い足に、パルがのそのそやってきて顎を乗せた。今日も弥勒のお洒落なスーツに犬の涎や毛が付いてるけど、弥勒は気にせずパルをガシガシ撫でて、「どうしてた? 」と優しく話しかけている。
「どうぞ! 」
と一子に言われ、弥勒も食べはじめた。
「あれ? 」
弥勒のシルバーの指輪だ! 先日も一子が煮たのでとりあげたのに、また探し出して入ってる!
「オレのだ」
と弥勒が親指と人差し指で、ヒョイっとつまんだら、
「おててでたべちゃ、ダメです! 」
と怒られた。
そんな時の口調は菜摘そっくりで、こうして親子は似るのかな、と、こそばゆい気持ちがする。
弥勒は、
「ダメだったね」
と言ってもどして、スプーンですくって、食べる真似をしながら、指輪をポケットにしまっている
「菜摘のご飯たべようぜ! 」
とおままごとに飽きた櫂が言った。