春は微かに
*
「赤塚くんは、人はどうして恋をするんだと思う?」
「…え?」
私と全く同じ道を辿って来た生徒。悩みとどうにもならない恋心を連れて、逃げるように私の元にやってきた生徒。
分かるよ、分かるから、ちゃんとしないといけない。
「……そういう運命だからだと思います。俺は先生に恋をする道を辿る運命だった。…まあ、先生はそうじゃなかったけど」
赤塚くんと私は違う。先生と私が違ったように、人間は誰一人とも、同じにはなれない。
「昔、私の先生が教えてくれたの。"人が恋をするのは、寂しさを埋めてほしいと思ってるから。その感情こそが恋なんだ"って。きみは、どう思う?」
「…どうって、」
「私はね、相手の寂しさを埋めてあげたいって思うのが恋だと思う」
先生の教えが私の生きる意味だったように、今目の前にいる彼も、きっと私が生きる意味になっているのだと思う。
先生と、生徒。どうにもならない恋が、最大の青春になることもある。それもまた人生だったと、きっといつか笑って言えるようになる。
「私は、きみの寂しさを埋めることは出来ません」
けれど、それでいい。正しい答えなんてきっと誰にもわからない。間違わない人生はない。
そうやって、人は成長するのだと、かつて好きだった人に───教師に、私はちゃんと教えてもらった。
「先生、……ありがとうございました」
それは、きっと未来を生きる力になる。