春は微かに








「赤塚くんは、人はどうして恋をするんだと思う?」

「…え?」




私と全く同じ道を辿って来た生徒。悩みとどうにもならない恋心を連れて、逃げるように私の元にやってきた生徒。


分かるよ、分かるから、ちゃんとしないといけない。



「……そういう運命だからだと思います。俺は先生に恋をする道を辿る運命だった。…まあ、先生はそうじゃなかったけど」



赤塚くんと私は違う。先生と私が違ったように、人間は誰一人とも、同じにはなれない。




「昔、私の先生が教えてくれたの。"人が恋をするのは、寂しさを埋めてほしいと思ってるから。その感情こそが恋なんだ"って。きみは、どう思う?」

「…どうって、」

「私はね、相手の寂しさを埋めてあげたいって思うのが恋だと思う」




先生の教えが私の生きる意味だったように、今目の前にいる彼も、きっと私が生きる意味になっているのだと思う。


先生と、生徒。どうにもならない恋が、最大の青春になることもある。それもまた人生だったと、きっといつか笑って言えるようになる。





「私は、きみの寂しさを埋めることは出来ません」




けれど、それでいい。正しい答えなんてきっと誰にもわからない。間違わない人生はない。

そうやって、人は成長するのだと、かつて好きだった人に​───教師に、私はちゃんと教えてもらった。



「先生、……ありがとうございました」



それは、きっと未来を生きる力になる。



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