アンチテーゼを振りかざせ
◻︎
「ボールは、確かにそちらへ投げていた筈ですが。」
久しぶりに同期達と外へランチに行って、午後もとりあえず耐えるかと己を鼓舞して自席へ戻った時。
やけに苛立ちを孕んだ声が総務部の島に響いていて、何事かとゆっくり近寄った。
「…あ、保城さん…!」
私に気づいてそう呼ぶ、青ざめた顔の課長を見ただけで、「これは何かトラブルが起きている」と瞬時に伝わり、急に不整脈が現れる。
その呼びかけに釣られるように私の方へ向きを変えたスーツ姿の男性は、やはり苛立った表情を浮かべていた。
名前は、分からない。
だけど確か、営業部の人だ。
「これって、オフィス運営委員会の仕事なんじゃ無いんですか?」
男性はそう尖った声で告げて、そのまま私に自分のノートパソコンを見せてくる。
わけが分からないままに、拝見します、と断って画面を確認すれば、映し出されていたのは一件のメール。
日付はもう、1週間前のものだった。
【オフィスリニューアル後、新しく弊社の商材や事例を紹介できるスペースがフロア内に設けられると伺っております。
得意先を招待し、オフィスでそのまま商談が出来ればと思いますので、リニューアルスケジュールの詳細をご教授ください。
また、オフィスを案内する際の導線や説明資料なども共有いただけますか?
先方との交渉もありますので、早めに対応いただけると幸いです。】
メールの本文を最後まで確認してしまえば、心臓の拍はもっと乱れていた。
___こんな依頼、
私は1ミリも知らないし、聞いていない。