アンチテーゼを振りかざせ
「打ち合わせまで、ちょっと香月さんと話してきます。」とその場を去った瀬尾さん。
私はどうしても気になって、まだ誰も居ない会議室の椅子に腰を下ろす。
封筒の中身は、やはり無地のシンプルな便箋。
そこに並ぶ文字は、整っているけど少し角張っていて。なんだか真っ直ぐさが滲み出たような、そんな字。
____"保城さん。
突然の手紙、失礼します。
驚かせてドン引きされるかもと覚悟をしていますが、伝えたくてもその機会が減ってしまったのと、ヘタレで永遠に言えない気がするので文字にします。
メールより手書きの方が伝わるかと思い、手紙にしました…すみません。"
嗚呼、やっぱり枡川さんだ。
出だしから謝っていて、彼女らしい言葉に思わず微笑む。
"保城さんがプロジェクトに参加されるようになって、途中からだったにも関わらず、進捗具合を把握されるスピードに驚きました。
きっと打ち合わせとは別に、多く時間を割いてくださったのだろうと思います。
それに加えて毎回、正確で簡潔なデータを作成して提供してくださる保城さんに、随分と甘えてしまいました。
もうそろそろ完成予定の1人用個室は、他社さんでも割と取り入れることが多いものです。
「誰にも邪魔されず仕事に取り組める場所」
本質的な用途はそこにあります。
でも私は、今回この部分を形作っていく時、いつも保城さんを思い浮かべていました。"
「……私…?」
手紙なのに何故だか対話している気持ちになって、そう言葉を呟きながら続きを読む。
"保城さんのように、いつもいつも笑顔で頑張られている方が、そこに入るとちょっとホッとできるような。
1人で深呼吸ができるような。
そういう空間にしたいと、設計部やデザイン部と打ち合わせを重ねました。(力を入れすぎて若干ウザそうな顔されました。ビール飲める空間なら尚良かったんですがそれは無理でした。)"
当たり前でしょう、と突っ込みを入れてしまう。