僕に向かい風が吹いたって
5時間目。僕は、学校の屋上から町を眺めていた。
今、僕は授業をサボっている。だって、今……LGBTQの講演会なんだもん……。
どうせ、他の生徒に笑われたり貶されたりするだけだよ……。
そう不安を抱えながらぼぅっとしていると、屋上のドアが開いた。振り返ってみると、そこに立っていたのは、結芽だった。結芽の目には、涙が溜まっていた。
「……結芽?どうしたの?今、授業中のはずじゃ……」
「……宏美(ひろみ)こそ……」
「私?私は、サボってるだけ」
結芽の言葉に、そう返すと屋上から見える景色に目を移す。
「……私、逃げてきたんだ」
僕の隣に来た結芽は、そう呟いた。
「逃げてきた?」
「講演会聞いてたんだけど、他の生徒の差別の言葉に耐えられなくて……」
「……やっぱりか……私も笑われたり、貶されたりするのが怖くてサボったんだ……私のことを言われてるみたいで……」
「どういうこと?」
……僕、余計なことまで言ってしまった!誰にも言うつもりなかったのに!まぁ……でも……。
僕は、結芽に目を移す。結芽は、真剣な目で僕を見つめた。
「私……じゃなくて、僕はXジェンダーなんだ」
「Xジェンダーか……Xジェンダーって、5種類くらいあるんだっけ?」