―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
田淵が口に放り込んだカシューナッツをポリポリかじる。森の小動物みたいだ。
仕事を5時半に仕事を切り上げた田淵と透子は、互いの家の中間にあるパブのカウンターでビールを飲んでいた。
2人の家は同じ私鉄沿線の一駅違いの場所にあり、お互い歩いても行けるこのパブは仕事帰りによく一緒に立ち寄る店だ。
どの時間に来ても混みあうこともガラガラに空いていることもなく、適度に静かで適当にざわついている感じ。そして透子は店の外に茂る街路樹の風景が気に入っていた。
梅雨が来る前の、暖房も冷房も必要のない心地よい貴重な季節。
開け放たれた店の扉の向こうには、誇らしげに新緑を広げた木々が夜の気配に包まれようとしている。
「ホストクラブ?」
田淵はナッツをかみ砕きながら興味と疑いの両方で目を輝かせる。
「そう。イケメンコーチに群がる昼のホストクラブ」
「また話盛っちゃって。テニスのコーチにそんなイケメンばっかいるわけないじゃん」
「いるのよ。ズベレフだって錦織だってフォニーニだってサフィンだってチチパスだってイケメンじゃない。私気づいたんだけど、テニスする男ってイケメンが多いのよ」
「ずいぶんいろんな選手知ってるね。それさ、仕事中に検索してたでしょ」
ばれていたか。プロ選手にもイケメンはいるのかと、透子は仕事の合間に検索を始め、そしたらイケメン選手がわらわら出てきて止まらなくなったのだ。
「ついつい」
へへっと笑って透子は認めた。
「で、おばさんたちがきゃあきゃあしてるわけ? そんなに貢献してるならイケメン料もらわないと損だよね。テニスのコーチってお給料安いらしいから」
そこなのよ、そこでね。透子はテーブル越しに体を乗り出した。
「生徒数やプライベートレッスンの数で収入が上がるらしいの」
「つまり人気があればあるほど稼げる。だからホストクラブってことか」
「そういうこと」
「よし、わかった」
田淵が透子の肩に手を置いた。
「なにがわかったの?」
「僕もやる。そこに通うよ」
「今バカにしてたよね、おばさんたちがきゃあきゃあしてるって」
「だってそんなにイケメンぞろいなら行きたくなるよ。それに僕、一応学生時代はテニス部だからね」
仕事を5時半に仕事を切り上げた田淵と透子は、互いの家の中間にあるパブのカウンターでビールを飲んでいた。
2人の家は同じ私鉄沿線の一駅違いの場所にあり、お互い歩いても行けるこのパブは仕事帰りによく一緒に立ち寄る店だ。
どの時間に来ても混みあうこともガラガラに空いていることもなく、適度に静かで適当にざわついている感じ。そして透子は店の外に茂る街路樹の風景が気に入っていた。
梅雨が来る前の、暖房も冷房も必要のない心地よい貴重な季節。
開け放たれた店の扉の向こうには、誇らしげに新緑を広げた木々が夜の気配に包まれようとしている。
「ホストクラブ?」
田淵はナッツをかみ砕きながら興味と疑いの両方で目を輝かせる。
「そう。イケメンコーチに群がる昼のホストクラブ」
「また話盛っちゃって。テニスのコーチにそんなイケメンばっかいるわけないじゃん」
「いるのよ。ズベレフだって錦織だってフォニーニだってサフィンだってチチパスだってイケメンじゃない。私気づいたんだけど、テニスする男ってイケメンが多いのよ」
「ずいぶんいろんな選手知ってるね。それさ、仕事中に検索してたでしょ」
ばれていたか。プロ選手にもイケメンはいるのかと、透子は仕事の合間に検索を始め、そしたらイケメン選手がわらわら出てきて止まらなくなったのだ。
「ついつい」
へへっと笑って透子は認めた。
「で、おばさんたちがきゃあきゃあしてるわけ? そんなに貢献してるならイケメン料もらわないと損だよね。テニスのコーチってお給料安いらしいから」
そこなのよ、そこでね。透子はテーブル越しに体を乗り出した。
「生徒数やプライベートレッスンの数で収入が上がるらしいの」
「つまり人気があればあるほど稼げる。だからホストクラブってことか」
「そういうこと」
「よし、わかった」
田淵が透子の肩に手を置いた。
「なにがわかったの?」
「僕もやる。そこに通うよ」
「今バカにしてたよね、おばさんたちがきゃあきゃあしてるって」
「だってそんなにイケメンぞろいなら行きたくなるよ。それに僕、一応学生時代はテニス部だからね」