訳あり無表情少女と一途な幼馴染 〜裏の仕事〜
7…独占欲
夕方
今日の仕事が終わり、俺と栞は自室に戻ろうと動き
栞が扉を開ける時

「シオリ」
「はい」
「明日は最初から婚約者になってもらうよ」
「!?…っ」
「分かりました、では」

栞は即答し、先に部屋を出る
動揺を隠しながら扉に手を掛けると

「ホントに婚約者になってくれてもいんだけどね」

ピタ…と思わず体が止まる
振り向くと、ケイがニヤニヤと見てる

「…今の、どういう意味だ」
「そのまんまの意味だよ?」

俺は扉から手を離し、ケイの前に
ニコッと笑顔のケイを睨み付ける

「栞は、…アイツは俺の女だ」
「勿論、分かってるよ
 だけど付き合ってるってだけで、婚約者じゃないんだろ?」
「…」
「だったら…」

ケイは挑戦的な笑みで

「いくらでも隙はある、奪ってもいいよね?」

俺からアイツを奪うだと?
冗談じゃねぇ

「ぜってぇに栞は渡さねぇ、それに…」

今度は俺が口角を上げる

「栞がアンタに落ちる訳ねぇよ」

栞が俺から離れていく訳がない
これは、…確信だ

「ふ〜ん?随分とシオリを信頼してるんだな、自分以外を好きになる訳ないって」

ケイは視線を斜めに向ける

「まあその方が面白い
 君がそれだけシオリを想ってる分、俺の行動にどれだけ手を出さずにいられるか」
「…」

《絶対に手を出すな》

兄貴と栞に言われた言葉が脳裏を過ぎる
…舐めんな

「俺は今、桜井組の仮組員としてここにいる
 もうガキじゃねぇ、アンタの挑発になんか乗るかよ」
「ハハッ!イイねぇ?面白くなってきた!」

ケイは笑いながら部屋を出て行った

「やれるもんなら、やってみろ」

何があっても、栞は渡さねぇ


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