【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「……そうね。 だけどさ、あの人がもし本当にその奏人さんって人だったとしたら、なんで何も言わないの?奈都に」

「……え?」

 藍那のその言葉の意味を、まだわたしは理解出来ていなかった。

「もしだよ? もし奈都のことを本当に愛していた人なら、普通は再会すれば覚えてるはずだし、何かしらのアクションを取ってくるハズでしょ? 例えば、元気だった?とかさ。 何かしら言ってくると思わない?」

 藍那は冷静な表情と言葉で、そう言っていた。

「…………。確かに」

 そう言われるとそうだ。藍那の言う通り。もし彼がわたしが愛した奏人なのだとしたら、彼は絶対にわたしを覚えているはずだし……。忘れたいとことなんて、あるのだろうか……。

「特にそういうのは言われてない?」

「ない。……さっきは、お疲れ様です、だけ」

「それしか言わないってことは……やっぱり失踪した彼ではない可能性か高いってことなのか、それとも……」

 藍那は考え込んでいた。だけどその瞬間、休憩の終わるチャイムが鳴った。
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