【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜

それでも好き




 その言葉を、わたしは信じてもいいのだろうか……。ずっとそばにいると五月女社長は言ってくれるけど、信じてもいいのだろうか……。

 だって奏人だってそうだった。

「奈都、俺はずっとわたしのそばにいるよ。俺のそばで、奈都をずっと幸せにする」

 そう言ってくれていた。わたしはその言葉を信じていた。……ずっとそばにいたいと思っていたたったひとりの愛した人だったから。

 だけど奏人は、突然いなくなった。だからその言葉はウソになった。……ずっとそばにいると約束してくれたのに、その約束が守られることはなかった。

「……すみません。わたし、お昼、行かないと……」

「奈都……」 

 わたしは五月女社長の腕からするりと抜けると、そのまま備品管理室を出た。 そして少し歩いて立ち止まった。自分の体が、足が、震えているのが分かったからだ。

 五月女社長にそう言われて、正直動揺した。動揺したし、すごく焦った。 そして頭の中で、奏人のことばかり思い出してしまう。
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