【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「うん、うまいな」 

 買ったばかりのショートケーキを頬張る咲哉さんのその姿は、まるで子供みたいで。思わずクスッと笑いがこぼれてしまった。

「え、なんだ?」

「いえ。美味しそうに食べるなと思って」

 わたしがそう言うと、咲哉さんは少し照れたような表情で「そうか?」と言っていた。

「はい。 なんか咲哉さん、子供みたいです」

「子供?それは侵害だな。俺は子供じゃないぞ?」

 なんて言いながらも、甘いものが好きな咲哉さんは、ショートケーキを「もう一つ食べていいか?」と聞いてきた。

「はい。どうぞ」

 咲哉さんはよほど美味しかったのか、終始にこやかにしていた。

 こんなにも幸せでいいのだろうか。わたしはそんな咲哉さんを眺めながら、そんなことを思っていた。

 今がこんなにも楽しくて、幸せだからこそ……。わたしは本当にこのまま幸せになっていいものかって、そう思う。

 奏人がいなくなって絶望の淵に立っていたわたしに、一筋の光を照らしてくれたのは、咲哉さんだ。
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