エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「照れちゃって! こんなに可愛い子が私の娘になるのね。 うちは男の子が三人だったから、暑苦しいったら!」
「そうなんですか?」
社長に兄弟がいることを知らなかった私は驚いて目を見開く。
なんか、ちょっとショック…社長のことゼンゼン知らないのね、私……。
「…春希、自分の家の話しないでしょう? 自由奔放な私たちのこと、ちょっとは怒ってるのかもしれないわ」
「そんなこと…ないと思います! 今でも仲良くされているの、とっても素敵です。 きっと春希さんも――なんて、無責任なこと言えませんね」
「いいえ。 そう言ってくれて嬉しい」
それから私たちは、社長が帰ってくるまで色々な話をした。
社長の小さい頃のこと、お母様の海外での生活のこと。
私の両親のことも話した。
少し重たい話になってしまったのに、お母様は『夫婦の数だけ夫婦の形があるのよね』と言って柔らかく微笑んだ。
私はこんなに素敵な方と家族になれるんだ。
そう思うと心の底から嬉しかったし、なぜだか両親にも会いたくなった。
お父さんは北海道だから簡単には会えないけれど、きっと結婚を考えている人がいるって言ったら驚くだろうなぁ。
思い出したことがあるのだ。
確かに両親は喧嘩ばかりで仲が良くなかったけれど、私や兄の誕生日だけは祝ってくれていたこと。
その日だけはいつもより豪華な食卓を揃って囲んで、ろうそくの火を吹き消す瞬間は笑顔でおめでとうって言ってくれた。
両親は私たち子供のことを愛してくれていた。
離婚しなかったのに、『子供のために』って理由、本当の部分もあるのかもしれない。
今更思い出して、ちょっと鼻の奥がツーンとしてしまった。