エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「春希の父親とは、攻略結婚だったのよね」
私はお母様の話に黙って耳を傾ける。
「ある日。 唐突に『もういっかー!』ってなってね。 家のために結婚したんだし、そろそろお互い好きなことやりましょうって。 それで、離婚しちゃったの」
お母様がふふふ、と微笑む。
うちの両親とは違う。
子供からしたら、空気の悪い家庭が続くくらいなら潔く別れてくれた方がいい。
少なくとも、私はそうだった。
「苗字が変わると色々と面倒だから、戸籍はお父さんの方に残して、高校生だった春希は一人暮らしするって言って出てったの。 で、それならって私は海外に飛んだわ。 昔から夢だったのよね〜」
お母様って、気さくで楽しくて、パワフルな方なのね。
海外に飛んだって、ほんとすごい。
私が尊敬の眼差しでお母様を見つめていると、彼女は目を細めて続ける。
「円満離婚といえるし、仲は悪くないの。 今でも半年に一度、安否確認の連絡を取り合っているくらいよ。 あ、でもあの人、私の誕生日には必ずお花を贈ってくるわ。 私、こういう性格だし、すぐからしちゃうから正直困ってるんだけどね。でも気持ちは嬉しいから、内緒よ」
「…素敵です」
思わず笑みがこぼれる。
社長のご両親は離婚後も良い関係を築いている。
家は、多分離婚後は一度も会ってないんじゃないかな。
「だから安心して。 二人のお式は私もお父さんもバッチリ参加するわよ!」
楽しそうにウィンクをしてみせるお母様だけど、私は顔が真っ赤になる。
だって、結婚式なんて、急にリアルな話になるから…。