エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
とある麗らかな春の日のお話。
「うっ…お前、おっきくなったなぁ! 兄ちゃんは寂しいぞ、陽葵…陽葵が…!」
白を基調とした豪華な部屋にて、私、秋月陽葵の兄は大号泣。
こんなに素敵なお部屋にはそぐわない兄の嗚咽に苦笑いの、私と義姉。
「日向(ひなた)さん…落ち着いて」
兄のお嫁さん、ちさとちゃんが呆れた声をかける。
「そうだよ、兄さん。 たくさん人が集まるのよ。 腫れぼったい目じゃ恥ずかしいじゃない!」
「んなこと言ったってな、兄ちゃんはまだ認めてないんだ! 陽葵の結婚なんて…!」
この期に及んでまだ言うか。
兄さん、シスコンなんだよね。
私はちさとちゃんとふたりで肩を竦め、ふぅとため息をつく。
「もう本番なんだよ〜。 始まる前にその赤い目、なんとかしてきて!」
「ほら、日向さん、行くよ。 氷貰ってきてあげますから。 陽葵ちゃん、二人おいていかせてね」
「うん。 ごめんね、ありがとう」
情けない兄で……。
ちさとちゃんに引きずられるようにして部屋を出ていく兄の背中を見送る。
そんな私の足元には、床にペタンと座り込んで、パパとママが出ていったことに気づいていないチビちゃんがふたり。