秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「こういう、ズルいことは……」

しかし男性は、今度は脅すように声を低くした。

「察しが悪いですね。建築関係に顔が効くのだと理解できませんか? お兄さまの会社を潰すことも容易いと」

ぞっと背筋が冷えた。選択権なんてない、この人は最初から私を脅すつもりでこの場に連れてきたんだ。

涼晴と別れろ。でなければ兄の会社を潰すぞ、と。

「いずれにせよ、涼晴さんは渡米して、もう二度とあなたの前には現れない。大人しく身を引いてください」

男性は冷たく言い放ち、緑茶をすする。私はこれ以上、なんの反論もできなかった。




私がひと通りの事情を説明すると、兄は壁に拳を叩きつけ、ふざけんな!と叫んだ。

「私だって子どもができたとき、涼晴に伝えようか悩んだ。でもそうしたらお兄ちゃんの会社が潰されてしまうと思って――」

「だからふざけるなって!」

目に涙を溜めて兄が叫ぶ。まさか自分が人質にとられていたとは思わなかったのだろう。悔しそうに歯がみした。

「どうしてそういう大事なことを俺に相談しない! お前の枷になるくらいなら、会社なんていつでも畳んでやる!」
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