秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「そんなものはいりません」

「では、こういうのはどうでしょう。藍葉さまのお兄さまは建築事務所の社長を務めていらっしゃいますね」

ぴくりと肩が反応する。兄の仕事まで調べたのだろうか。

彼が取り出した分厚いファイルには『(仮)臨海アートギャラリー建築案』と書かれていた。

「文化施設建築プロジェクトにお兄さまを名指しするのはいかがでしょうか。とても芸術性に秀でた名誉な案件ですよ。最高の兄孝行になると思いませんか」

資料を手渡され、パラパラとページをめくる。どうやら臨海地区に巨大な美術館を建築しようとしているようだけれど……素人の私には、それがどれだけ名誉あることなのか、よくわからない。

しかし、ファイルのうしろのほうに見積もり金額が載っていて、その桁に腰を抜かしそうになった。とんでもない大金が動くプロジェクトのようだ。

「藍葉さまは幼い頃にご両親を亡くされて、お兄さまには大変お世話になったことと存じます。そろそろ、恩返しを考えてみてはいかがですか」

それは……と口ごもる。自分のしあわせよりも私を優先してくれた兄。

孝行はしたいけれど、こんな裏工作のようなことをしても喜ばないんじゃないかと思う。
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