秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
結果的に、辰己家は名誉ある案件とやらを兄に頼んでくれたらしく、兄は「いい仕事が入ったんだ!」と喜んでいた。

臨海地区に美術館を建築するのだと楽しそうに語る兄の姿を見て、これでよかったのだと納得できた。

だが、晴馬に関してだけは、申し訳なさがずっと拭えずにいた。

「晴馬のことは……隠れて産み育てるしかなかったの」

父親のいない寂しい子どもにしてしまった。なんとか私が守ってあげなきゃと、毎日必死に生きてきた。

これからもそうしたいと思っている。たとえ涼晴がそばにいなくとも。

兄は「くそっ……!」と悪態をつき、しばらく涙を流し続けていた。


< 155 / 205 >

この作品をシェア

pagetop