秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
どうしてこんなことになってしまったのだろう? 私は頭が真っ白で、彼に身を委ねることしかできなかった。

「ずるいのは、俺のほうだな」

「なんの、こと……?」

「君にだけ言わせるなんて、男らしくなかった」

顔を上げると、困ったように微笑む彼がいた。いつもとは違う大人っぽい表情に、心が持っていかれそうになる。

なにも言葉にならなくて、はくはくと口を上下させていると、彼は小さく笑ってなだめるように私の頬を撫でた。

「俺も、君とおんなじことを考えてる」

艶めいたささやきに体温がぐんと上昇して、呼吸がうまくできなくなった。顔が火照って熱い。

ねぇ、涼晴さん。私と同じって、それって――。

「だから言ったんだ。ちゃんと警戒してくれって」

彼の唇が私の額の上で、ちゅっと愛らしい音を鳴らした。

初めてわかった。これが理性では抗うことのできない〝事故〟なのだと。

理解すると同時に、喜びが込み上げてくる。とうとう限りなく奇跡に近いこの偶然が、私たちの身にも起きたのだ。

「兄には内緒にします。だから――」

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