秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
彼女はいつでも一緒にいたいからなんて言って、俺の写真を撮りたがっていたけれど。

写真の一枚でもあれば、彼女の心を一分一秒でも長く繋ぎ止めていられたのだろうか、今さら未練がましくそんなことを考えてしまった。



一週間後。仕事帰りに、俺は近所の小料理屋で斗碧と待ち合わせをした。

この歳になると酒付き合いともなりそうなものだが、俺は病院からいつ呼び出されるかわからない身だし、斗碧のほうは自転車だ。お互い飲酒はできない。

せめてノンアルコールビールで乾杯し、小鉢の料理をつつく。

「あれから、茜音ちゃんの足はどう?」

「ああ。よくなってきた。診療後三日くらいは全然腫れが引かなくて、ヤブじゃないかと疑ったけど」

「失礼だな。薬は瞬時に回復する万能薬じゃないんだ」

外科だろうと内科だろうと、なかなか治らないと不安になる患者は多いが、処置を施して一瞬で回復する病や怪我なんてほぼ存在しないのだから当たり前だ。

外科的な処置は体にメスを入れる分、当然回復にも時間がかかるし、薬はあくまで体をサポートするためのものであって、治療の主体となるのは本人の治癒力や免疫力。特効薬など滅多に存在しない。

そもそも、そこまで体を劇的に変えるようなものを体内に取り込んだら、副反応で身がもたない。
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