秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
卒業したあとも、彼は必死に努力を続けた。事務所社長という地位に立ち、今では妹を、果てはその息子も立派に食わせてやっている。

「残念だったな、玉の輿に乗りそびれて」

斗碧がケラケラ笑いながらおちょくってくる。ふと懸念が頭をよぎり「なぁ斗碧」と切り出した。

「もしかしてそのこと、茜音ちゃんにも言った? 海外で縁談がどーとか……」

さりげなく尋ねてみると、斗碧はなんのことかときょとんと目を瞬かせた。

「茜音に? 言わないけど。なんで?」

「……いや。別に深い意味はないよ。日本へ戻ってきたことにずいぶん驚いていたみたいだったから」

まさか、縁談の話を耳にして、茜音は俺との関係を絶ったのか……? そんな推測を立てたが、どうやら違ったらしい。

兄の口から他にヒントを得られないかと、世間話を装いながら探りを入れる。

「そういえば茜音ちゃんは、今シングルマザーなのか? 籍は?」

尋ねてみると、斗碧はわかりやすく暗い顔をした。

「あー……まぁ、うん。籍は入れてない。正直言って、俺にもさっぱりわからないんだよ」

ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜながら、納得のいかない顔で不満を吐き出す。
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