偽りの夫婦
「わかりました。
ごめんね……」
と玉本は、友人二人に断りをいれ、ゴミ箱に捨てた。

「ん。
あと…お前等もう……二度と、俺の前に現れるなよ!」
そう言って部屋を出ていった。

紫龍と入れ違いに、吉野が入ってくる。
「お前等、わかってるよな……!?」
「はい」
「恩を仇で返しやがって……」
この事務所の女性達は、みんな借金などで組の人間が面倒をみている。
風俗などにまわすのも簡単だが、紫龍が事務所内の仕事も女性にしかできないこともあると、雇ったのだ。
玉本達もその中の一人だ。

「お前等ごときが、紫龍様と対等に付き合えると思ってたことが、不思議だ」
「でも、奥様だって普通の……」
「は?
でも、紫龍様が惚れた女だ。
それに陽愛様は、紫龍様が若頭だと知らない。
紫龍様が隠してまで、囲いたい女だと言うことだ。
それを忘れるな!
……あ、でももう二度と会わねぇか…」

「……あの、私達あそこだけは……」
「いや、無理だろ!?
お前等がそれだけのことをしたんだから。
紫龍様の陽愛様への愛情を、お前等はわかっていない」
「申し訳ありません!お願いします!助けてくだ━━━」

「うるせー!地獄に堕ちろ……」
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