偽りの夫婦
「話はそれだけ。もう行っていいよ」
「ちょっと待ってくれ!」
「あ?これ以上まだなんか言うなら、地獄…連れてくぞ」

「早く出ろ!紫龍様がお優しい内に…」
吉野が、鳥羽の肩を掴む。
「お前等も最低だな」
「ありがと」
フフ…っと笑って紫龍が言った。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
帰りの車内。
鳥羽に着信が入る。
「はい」
『あ、鳥羽さん?神宮です』
陽愛の柔らかな声がする。
「あぁ」
『今どこですか?イベントの話し合い始まってますよ?』
「ごめん、体調崩して行けないんだ」
『え?大丈夫ですか?』
「うん…もう職場には行けないと思うんだ…」
『は?あのそれってどうゆう……』
「ひとつだけ……言わせて?」
『え?』
「君の旦那は恐ろしくて、魔王みたいな人だよ!気をつけて!」
『え?鳥羽さ━━━━』
そこで通話を切った。

「あまり余計なことを、陽愛様に吹き込まないで下さい」
「うるせーよ」
呟き、車の天井を仰いだ。

「魔王って何?」
鳥羽さん、どうして悲しそうだったんだろう。
「陽愛ー!鳥羽さん、なんて?」
「体調崩して、行けないって」
「え?大丈夫なの?」
「うん…よくわからないんだけど、もう来れないって……どうゆうことだろう」
「ん?なんか意味わかんないね…?」
「うん……」

結局何もわからぬまま、陽愛はその日の仕事を終えた。
「ただいま、帰りました」
「おかえりなさいませ、奥様」
「………」
「?どうかされましたか?」
「あの、三好さんは紫龍のことよくご存知ですよね?」
「え?まぁ、奥様よりは長いので…」

「三好さんから見て、紫龍はどんな人ですか?」
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