偽りの夫婦
「何飲む?」
「は?」
「俺、同じことは二度言いたくねぇ」
「いらない」
「あ、そう」
「話を聞かせろ!」
「陽愛の前から消えて?今すぐに」
「なんで?」
「目障り」
「お前、俺が怖いの?」
「は?」
「俺に取られそうで怖いんだろ?陽愛ちゃんのこと」
「あ?お前誰に向かって━━━━」
紫龍の後ろにひかえていた、部下の甲野が凄む。

「フフ…怖いけど、取られそうで怖いんじゃねぇよ」
「は?」
「陽愛の記憶…お前のせいで取り戻したら嫌だから、消えてっつってんの。
それに、お前には取れねぇよ、陽愛のこと。
お前の弟なら、あり得るかもだけど……。
……ってそれもねぇか(笑)!
お前の弟も最低だもんな」
「は?」
鳥羽が、紫龍をギッと睨んだ。

「お前が俺等のこと調べてるように、俺等もお前等のこと調べてんだよ。
だから、弟のことも知ってるよ。お前等兄弟が陽愛に何したかも」
「………」
「とにかく陽愛の前から消えろよ!
ここで消えるなら、お前が陽愛に触ったの大目に見てやっから。
言っとくが、凄いことだよ!この俺が大目に見るって!普通なら、即行地獄行きだな」

「やだよ!ちゃんと陽愛ちゃんに謝罪して、また最初からやり直すんだ」
「レイプ兄弟が何言ってんだよ!」
ハッと鳥羽が、紫龍を見た。
そう。鳥羽兄弟は中学の時、陽愛に乱暴し傷つけた過去がある。
元々陽愛と寛文は交際していて、とても仲良かった。でも兄である鳥羽に紹介して狂ったのだ。
鳥羽は学生時代はチンピラのようなことをしていて、仲間達と陽愛に乱暴しようとしたのだ。
そして、寛文も助けるどころか一緒になって傷つけたのだ。
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