偽りの夫婦
「たまたま二人がいるとこ見て、つい…無意識に追いかけちゃったの!」
陽愛の目のから涙が溢れる。

「あれは、ホステスだよ?
仕事で━━━━」
「わかってるよ!わかってる。紫龍は社長さんだから、仕事や付き合いで行かなきゃいけないこと位。
でもあんなに……べったりくっついてるの見ると……」
「そう…ごめんね……辛い思いをさせたね…」
紫龍が涙を拭う。

「不安なの……。
紫龍が、紫龍は私のモノだって言ってくれたこと、とっても嬉しいし、ピアスもあるけど、ただ紫龍が女の人といるの見るだけで、嫉妬で息苦しくなる」
「うん、俺も…」
「え……?」
「俺も、息苦しいよ?陽愛が俺以外の人間といるとこ見ると。
俺をどうしたい?陽愛は」
「え?どう…って……」
「監禁する?いいよ。陽愛がそうしたいなら。
まぁ、その代わり陽愛も一生外出れないし、俺から放れられないけど」
「いや…別にそんなことしてほしいなんて……」
「そう?俺は陽愛が傍にいてくれるなら、何でもするし、何でもしてあげるよ?」
紫龍のこの言葉は、言い様のない重みがあった。
紫龍が言うと、何でも実現してしまいそうな説得力がある。

「じゃあ…丸一日、紫龍と二人でいたい」
「え?」
「丸一日でいいから。
二人っきりで過ごしたい。もし途中で仕事の連絡があっても断って、その日だけはデートしたり、家でイチャイチャしたりしたい」
「フフ…可愛い…。
わかった!いいよ!じゃあ…仕事調整するよ!」
「いいの?」
「もちろん!だから、そんな可愛いお願いは大歓迎だって言ってるでしょ?」
「ありがとう!」
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