偽りの夫婦
「やっぱ、カッコいい!紫龍。
とても似合ってる!」
「陽愛、ありがとう!」
「うん!」

手を繋ぎ、ゆっくり歩いて街を歩く。
なんと言っても、美男美女の二人。
二人が歩くだけで注目を浴びる程、輝くようなオーラのある二人だ。

サイズ変更をお願いしていた指輪を取りに行き、再度紫龍がはめる。
「フフ…ぴったりだ…!」
「うん…」
そして他のアクセサリーをなんとなく見る。

「あれ~?陽愛?」
「え?寧々?」
「久しぶり!」
「うん」
寧々は、職場の陽愛の同僚で、初めは美緒も入れてよくグループで仲好くしていた。
でも陽愛や美緒は苦手なタイプだった。
寧々は自己中心的な性格で、自分より目立ったりしてると、必ず相手をおとしめるようなことをしていた。
特に陽愛には辛く当たっていた。
陽愛は“容姿端麗”と言われる程の美形な為、職場でも目立っているから。
美緒がよく一緒にいて守ってくれていたが、陽愛が一人の時はよく、つっかかるようなことをしていた。
だから最近はシフトをずらすようにしたり、なるべく会わないようにしているのだ。

陽愛は無意識に、紫龍と繋いでいた手を強く握りしめた。
その小さな変化に紫龍は、だいたいのことを察する。
「陽愛」
「あ…え?」
「早く行こ!俺、腹減った!」
「うん…。
ごめんね…寧々、またね!」
「え~!
てか、めっちゃ、イケメン…。
もしかしてこの人が旦那?陽愛」
と手を掴まれる。
「え、あの━━━━」
「旦那!!」
すかさず、紫龍が答えた。
「え、へぇー。
素敵な旦那さんだね。陽愛」
少しひきつっている。
「うん」
「悪いけど、今日は大切な日だから、邪魔しないで?
行こう!陽愛」
と紫龍が少し強い口調で話し、陽愛を引っ張ってその場を後にした。
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