偽りの夫婦
ショップに入り、辺りを見回す。
「あ…」
すぐに陽愛とゆう人物が誰かわかった。

紫龍とお揃いの黒い龍のピアス。

可愛らしい人だった。
人を惹き付けて放さない、美しさがあった。

フラッと陽愛に近づく。
「すみません」
「はい!いらっしゃいませ!」
フワッと笑う、陽愛。
「その、スカート…素敵ですね」
「あ、これは…ここのオリジナルなんですよ?
向こうのコーナーはオリジナルばかり集まってるので、よかったらご覧ください!」

行ってみると、陽愛と同じスカートがある。
おもむろに取ってみる。
「あ、それです!
でもお客様は、とてもスタイルいいから、こちらのロングの方がお似合いじゃないかな?」
「は?
私には似合わないってこと?」
「え…?
いえ、そんなことは……」
「じゃあ、どうゆうことよ!?」
まどかは陽愛に詰め寄った。

「え…この香水……」
陽愛は驚いたように、まどかを見上げた。
私服で、化粧もナチュラルだったからか、今の今まで全く気づかなかった、陽愛。
詰め寄られて、初めて香りでわかった。

「紫龍の行くクラブのホステスさんですか?」
「は?」
「香水…紫龍から、香る時があるから」
「あーまぁね…私だって愛されてるんだから」
「は…?」
「あなただけじゃないのよ!紫龍様のような方には、色々…女がついてこそなんだから」
「━━━━!」

色々……?
………って、何?

仕事が終わり、紫龍にメールをしようとして、手が止まる。
どうして私ばかりこんなことしなきゃいけないの?
紫龍はクラブで女性と話すことが許されて、私は男性と関わることさえ許されない。

陽愛は、初めて紫龍へのメール連絡をしなかった。
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