愛しい君のわがままを
「私が、先輩の入学する大学に合格するまでの一年間……」


腕を掴んでくる指先に、ぎゅっと力が籠って。


「浮気なんかしたら、絶対に許さないんだから……っ!」


キッと睨みあげて、ほんのりと膨らまされた頬。
その表情とは裏腹に、瞳は涙で潤んでいる。


彼女のこんな表情も、彼女のこんな感情も、初めて見た。


ぶわり、と上がる体温。
愛しくて、離したくなくて、大切にしたいような、壊してしまいたいような、よく分からなくなりそうな感情に軽く眩暈がする。



浮気するなんて無理に決まってる。


多分ここからの一年、俺はずっとお前が誰かにちょっかいかけられてないか気にしながら過ごすんだ。

そしてこの後、後輩に頭を下げる自分自身も容易に想像できる。

『あいつに余計な虫つかねぇように見張っといてくれ』って、情けなくも頼むわけだ。



揶揄われるのも目に見えてるけど……なりふりなんか構ってられるか――。
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