帝王と私~Darkness~
できる限りゆっくり、貴将の腕の中から出てテーブルに向かい、スマホを持ってまた貴将の腕の中に戻る。

貴将の寝顔を撮ろうと、スマホを向けた瞬間。
パチッと貴将の目が開いた。
「え……」
「フフ…ずーっと起きてたよ!」
「は?嘘だぁ~!さっきほんと寝てたもん!私、寝顔見たよ!貴将さんの」
「だから、絶対見せないって言ったでしょ?」
貴将は弥生の頭を撫でながら言う。

「嘘だよ!私が一度、スマホ取りにここから出たから、目が覚めたんでしょ?」
「【ん?貴、将さん…寝てる?
嘘…寝てる。
寝顔だぁ…。
か…可愛い~。どうしよう……写真撮りたい…!】って言ってたじゃん!」
「え…」
一字一句間違ってない。
弥生がびっくりしている。

「フフ…弥生が俺の寝顔見たそうにしてたから、寝たふりしたの」
「え~!酷ーい!
もういいもん。お風呂入ってくる!ひ、と、りで!」
そう言って貴将の腕の中から、出ていく弥生。

「弥生」
「え━━?」
ただ一言、名前を呼ばれただけなのに、声はいつもと同じ優しい声なのに、その重みのある声にビクッとする。
「弥生は一人で風呂入れるの?」
「え?」
「俺を、ここに、置いて」
なんか…怖い……
寒気を感じた、弥生。
「あの…貴将さん…。
一緒に…お風呂、入ろ…?」
「うん、いいよ」
フワッと笑って、弥生を抱き締めた貴将だった。
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